西田幾多郎

1870年生まれの哲学者。著書に『善の研究』など。京都大学名誉教授。

 若い時は肉親の死など、多くの苦難を味わった。その頃の思索の結晶が『善の研究』。この本は、旧制高等学校の生徒らの必読書になったという。

 本格的に哲学を学んだのは、東京帝国大学に入学してから。苦難にあった時は、海に行って気持ちを静めたという。二十代後半から十数年間、禅に打ち込み、徹底的に修学、修業した。その後、京都帝国大学教授となり、18年間教鞭を執り、三木清など多くの哲学者を育ててあげている。

 西田の哲学体系は西田哲学と呼ばれ、仏教思想と西洋哲学を根本的な地点で融合しようとした。その思索は、禅仏教の「無の境地」を哲学化・論理化した純粋経験論から、その純粋経験を自覚することによって自己発展していく自覚論、そして、その自覚などの意識の存在する場としての場の論理論、最終的にその場が宗教的・道徳的に統合される絶対矛盾的自己同一論へと発展していった。彼の「場所の哲学」は、梅本克己、梯明秀、黒田寛一らに受け継がれた。黒田寛一氏によれば、「場所」が哲学的思索のテーマになるということは、自分自身の生死に関わり、存在の深みに関わることであり、また歴史を創っていくとはどういうことなのかを明らかにすることだとされる。

 1945年、終戦を待たずにこの世を去った。享年75歳。

 名言の一つ、「善とは一言にていえば人格の実現である」。

参考文献

中村雄二郎『西田哲学の脱構築』岩波書店、1987年

中村雄二郎『西田幾多郎』岩波現代文庫 全二巻、2001年

藤田正勝『西田幾多郎 生きることと哲学』岩波新書、2007年

小林敏明『西田哲学を開く』岩波現代文庫、2011年

永井均『西田幾多郎-「絶対無」とは何か』NHK出版、2006年