選挙のしくみ

皆さんは選挙の際に投票に行っていますか?

近年の日本では選挙での若者の投票率の低さが社会問題となっています。

若者が投票に行かない理由として、よく言われるのが「誰がやっても同じ」とか「一票で何かが変わるとは思えない」というものです。

中学生のころから政治に関心をもち、何が正しくて何が間違っているかということについて考えてきた僕にとっては、メディアなどでよく取り上げられる「投票に行かない理由」は正直に言ってどれも理解できるものではありません。

社会を良くするために意思表示することは生活の一部であり、僕自身が主体性を持った一人の人間として存在することの証でもあると感じているからです。

それでも数多くの若者が選挙に行っていない現実を考えると、「けしからん」と上から目線で非難するのも良くないと思うので、まずは選挙のしくみについて解説したいと思います。

 

              国政選挙のしくみ

国政選挙には主に2種類あります。衆議院議員総選挙と参議院議員選挙です。

内閣総理大臣を輩出する政権与党を決めるのは衆議院議員総選挙(以下、衆議院選と表記)です。衆議院選で選出された衆議院議員の任期は4年間で、内閣が議会を解散すれば4年の任期を待たずして衆議院議員の身分を失い、衆議院選となります。

衆議院選のしくみは小選挙区制と比例代表制の2種類です。

小選挙区制は都道府県のなかで選挙区を区分し、各選挙区につき一人が選出されます。

比例代表制では立候補している政党や政治団体が届け出た名簿にもとづき、得票数に応じて当選者が割り振られます。名簿に記載されている候補者のなかで誰が当選するかは、届け出のあった名簿の順位によって決まります。(順位が上の候補者から当選していきます。)

小選挙区制では特定の候補者の氏名で投票するの対し、比例代表制では名簿に記載されている政党名で投票します。

小選挙区制の投票用紙に政党名を記入したり、比例代表制の用紙に候補者名を記入しても無効になってしまうので注意が必要です。

そして衆議院選にはもう一つ、複雑なシステムがあります。

小選挙区比例代表並立制です。

これは候補者が小選挙区制と比例代表制のどちらにも立候補できるシステムです。

もし、小選挙区制のほうで当選すれば比例代表制の名簿からは除外(記載されていなかったのと同じ)されます。小選挙区制のほうで落選した場合でも、比例代表制で所属政党が自分の名簿順位まで当選できる得票を得れば、復活当選できるというしくみです。

このしくみを利用できるのは、国会議員が5人以上存在するなどの特定の条件を満たした政党のみです。政治団体は小選挙区比例代表並立制を使って立候補することはできません。

さらに複雑な制度があります。

小選挙区比例代表並立制で小選挙区と同時に比例代表でも立候補する候補者を、比例代表の名簿順位を決めずに、同じ名簿順位で立候補させることができる制度です。

この場合、小選挙区で落選した候補者の中から比例代表の復活当選者を「惜敗率」で決めます。

「惜敗率」を簡単に言うと、小選挙区で当選した候補者の何パーセントの得票を得ているかという数字です。

ですので、惜敗率が100%を超えることはありません。

ようするに、小選挙区と比例代表の並立で立候補して、小選挙区で落選した候補者のなかから、「惜しかったけど接戦で敗れた」率が高い候補者から、名簿順位の上位と同じ扱いをされるというしくみです。

最近は自民党や立憲民主党などの候補者数の多い大きな政党は、この「惜敗率」が関係する名簿順位が同じの小選挙区比例代表並立制を使うことが多いです。

そのため候補者本人も応援している人からしても、たとえ小選挙区で落選しても復活当選のために接戦に持ち込めたほうがいいでしょう。

任期中に議員が死去したり、辞職や失職したりした場合は、小選挙区の場合は任期満了が近くない限り、その選挙区のみの補欠選挙が行われます。

比例代表選出の議員に欠員が出た場合は、欠員となった議員の名簿の次点だった候補者が繰り上げ当選することとなります。

次に「良識の府」と言われる参議院議員選挙についてです。

参議院議員の任期は6年間で3年ごとに半数が改選を迎えます。

衆議院のように解散はないので、何もなければ6年間まるまる議員でいられるということになります。

参議院議員選挙(以下、参議院選と表記)のしくみは小選挙区制、中選挙区制、比例代表選挙の3つです。

といっても3回投票できるわけではなく、都道府県によって小選挙区制か中選挙区制かが違うということです。小選挙区制の場合は衆議院選と同じで、選挙区一つにつき一人が選ばれます。中選挙区制は一つの選挙区で二人以上の人が選ばれます。

参議院選には衆議院選のような比例代表と選挙区の並立立候補制はありません。

なので、候補者はどちらに立候補するかを選択しなければなりません。(無所属であれば選挙区しか立候補できません)

参議院選の比例代表は衆議院選とはまた違った複雑さがあります。

まず参議院選挙の比例代表制には衆議院選のような名簿順位を付けないのが一般的です。

有権者は政党名で投票しても候補者名で投票してもどちらでも良いのですが、候補者名で投票すると政党名で投票したことにもなるので、名簿の中に「推しメン」がいる場合は、その人の名前で投票した方がいいでしょう。

そして、その個人得票の多い候補者から順番に当選していくという感じです。

何だか衆議院選の順位をつけない比例代表並立制と似ていますね。

前回の参議院選の前に公職選挙法が改正され、参議院選の比例代表でも名簿順位をつけて、単独で立候補ができるようになりましたが、そのことはあまり認知されていません。

参議院で欠員が発生した場合も、衆議院と同様に選挙区であれば補欠選挙が行われ、比例代表であれば次点の候補者が繰り上げ当選します。

             地方選挙のしくみ

地方選挙には都道府県議会議員選挙と都道府県知事選挙、市町村議会議員選挙と市町村長選挙の4種類があります。

都道府県議会議員選挙では、各市町村ごとに選挙区がわかれており、小選挙区制のところもあれば、中選挙区制のところもあります。いくつかの市区町村をまとめて一つの選挙区にしているところもあります。

都道府県知事選挙では、その都道府県のリーダーを決める選挙なので、選ばれるのは一人です。

市町村議会議員選挙では政令指定都市でない限り、市町村の中で選挙区が分かれているということはありません。大選挙区制で、大きな市ともなれば、定数が40人や50人であることもあります。政令指定都市の場合は区ごとに選挙区が分かれており、人口によって定数が異なります。

市町村長選挙は都道府県知事選挙と同様に、その自治体のリーダーを決める選挙なので当選できるのは一人だけです。

地方議会議員選挙や都道府県議会議員選挙は国政選挙と違い、その自治体に住民票がある人しか立候補できません。選挙が公示される3カ月前から住民票がその自治体にあり、尚且つ生活実態(電力や水道などのライフラインを使用しているかどうかが基準)がなければなりません。生活実態がなくても住民票があれば立候補できてしまうことも多いですが、たとえ当選しても、選挙後に有権者から告発があると生活実態が調査され、ないと判断されれば当選無効となってしまいます。

一方で、都道府県知事選挙や市町村長選挙などの行政のリーダーを決める選挙では、住民票や生活実態の有無は関係なく、全国どこからでも立候補することができます。

都道府県知事選挙や市町村長選挙で選ばれた人物が死去したり、辞職や失職した場合は無条件で必ず選挙が行われます。任期は4年ですが、それまで選ばれていた人物(つまり前職)が自ら辞職して選挙に出馬したり(出直し選)失職した人物があらためて出馬して、当選した場合の任期はそれまで務めた分から引き継がれることになります。(任期の4年間のうちの3年目で辞職し出直し選挙で当選した場合は、残る任期は1年で1年後にまた選挙が行われる)

都道府県議会の議員や市町村議会の議員が身分を失った場合は公職選挙法にもとづいて補欠選挙が行われます。ただし首長選挙と違い、補欠選挙を実施する要件を満たしていなければ、すぐに実施されないこともありますし、任期まで行なわれないこともあります。

また、選挙で当選して3カ月以内の議員が辞職したりするなどした場合は次点だった候補者が繰り上げ当選することになります。

              まとめ

いかがだったでしょうか?

こうして文章であらためて説明すると、とても複雑でわかりづらい印象を受けます。それでも、それぞれの選挙の違いや役割を少し知っておくだけでも、選挙への意識は変わってくる人がいるのではないでしょうか?

僕は投票率を高め、多くの人が投票に出向くようになるには主権者教育が重要だと考えています。同時に、選挙の根幹にある民主主義というシステムの重要さを理解するには、日頃から自分の頭で考えたことを発信し、身の回りで「民主主義」的な出来事を体現することが極めて重要であると考えます。まだまだ日本の学校教育はそうなっていないのが現状です。

これから先、選挙権のある若者やこれから選挙権を持つ未来の有権者がもっと政治に関心を持ち、この国が真に民主主義で国民の声が反映される国になることを期待しています。